Heavy Metal: Black and Silver

ある日、Blue Öyster Cult のSNSに、次の写真が投稿された。

BÖCファンのだれもが、この写真にニヤニヤしたであろう。

この写真はAdrian Berryの「The Iron Sun– Cross the Universe Through Black Holes」の目次であるが、一部のタイトルがBÖCの「Heavy Metal: Black and Silver」の歌詞そのものだからだ。

Heavy Metal Black and Silver(1981)はBÖCの曲の中でもHeavyな曲の一つである。

その歌詞は、Adrian Berryの「The Iron Sun」をもとに作られたことがわかった訳である。

であれば「The Iron Sun」を手に入れたい、と思うではないか。Amazonを探すとPaperback・中古の原書を販売中!西洋でヒットした本であれば、日本でも売られたはずだ。日本語訳はないものか…。あれ、「太陽と鉄」という本があるぞ…裸の褌男子の表紙…三島由紀夫であった。

私はAmazonに促されるままに「The Iron Sun」と「太陽と鉄」を注文したものの、それらが到着すると、どうしたものかと途方にくれたのであった。

1.「BÖC」についての簡単な説明

Blue Öyster Cult。1970年代から活躍しているアメリカのバンド。

当初のメンバーは(向かって左から)

Eric Bloom (vocals, stun guitar)

Donald "Buck Dharma" Roeser (lead guitar, vocals)

Allen Lanier (keyboards, guitar)

Albert Bouchard (drums, vocals)

Joe Bouchard (bass, vocals)

さらに、

Sandy Pearlman(Blue Öyster Cultのプロデューサー)

邪悪な宇宙人の侵略、ラヴクラフトの小説などに影響を受けたのか「Imaginos」という詩を作った。彼はニューヨーク州ロングアイランドの上手いバンドを買ってBÖCを仕立て、「Imaginos」の世界を演奏させたと思っていた。しかし曲を作っているのはBÖCのメンバーなので、BÖCはPearlmanの意図をうまくくみ取れる人達だったのだろう。

曲調は多少不気味で多少ハードで多少ポップな中途半端な感じだが、信者は多い。ちょっとオタクかもしれない。

最近も新曲を発売した。

2.参考図書からわかったこと

なぜBÖCは「The Iron Sun」の目次をパクったのかが気になり、資料をさがしてみた。

(1) 「on track… Blue Öyster Cult every album, every song」Jacob Holm-Lupo(2019)

Jacobさんはノルウェーのミュージシャンでジャーナリストだそうだ。自称「80年代の中流階級のオタク。」Sandy Pearlmanは2016年に亡くなったが、何度も電話でインタビューし、話を聞けたそうだ。

『BÖCの特徴は、ブルースやサイケデリアを介してフォークロックからラテンジャズまで、非常に多彩な音楽を持っていたこと。』

『もう一つはサンディ・パールマンがレコードプロデューサーだったこと。少しばかげていることが、ハードロック主流の他の人々に愛された。』私もばかげたところが好きだ。

「Heavy Metal: Black and Silver」については

『Sandy Pearlmanが読んだ科学の本「The Iron Sun」から言葉を拾った。アルバートが歌詞にした。Imaginosとはあまりリンクしないものとなった。』

この程度の情報しか拾えなかったが、Jacobさんは以下の人たちから情報を得たという。


・世界有数のBÖC専門家、Bolle Gregmar  http://www.hotrails.co.uk/index.htm

・バンドの作詞家、John Shirley

・Martin Popoffの「Agents of Fortune」という著書。これは手に入った。



※「on track…」シリーズは、プロのライターでなくても、ミュージシャンについて自分で資料収集し、分析したことを書いているのであれば、本として出版してくれるそうである。ただし英語onlyだそうだ。どなたか挑戦してはいかがでしょうか。

(2)「Agents of Fortune」Martin Popoff(2016)

この本もAmazonで入手。

ここではアニメーション映画「Heavy Metal」についても取り上げられている。。


『当時、「Heavy Metal」という漫画雑誌があり、同名のアニメーション映画が作られることになり、ビッグバンドの曲がサントラとして集められた。

BÖCにも画面と台本が送られ、何曲か提示するよう求められた。6~7曲作り送ったが、他のバンドの曲も入れなければならなかったため、結局1曲だけの提供となった。採用されたのはEricの書いた「Veteran of the Psychic Wars」だった。』

多分「Heavy Metal: Black and Silver」はアニメを意識して作られたもので、採用されなかったものであろう。

『「Heavy Metal: Black and Silver」は一発録りで、まったくおかしなことに、Ericがベースを弾き、Albertがギターを弾いた。その時は誰もが何かしら忙しくて、すべてを窓から放り出したいという感じだった。この曲の多くはAdrian Berryの「The Iron Sun」から派生している。』


つまり、「Heavy Metal: Black and Silver」は、クソ忙しい時にアニメの依頼があって、Sandy Pearlmanが自分が読んでいた本の目次からコレとコレとコレ、と言葉を選んで誰かが曲を作り、EricとAlbertが適当に楽器を弾いた、と想像する。どうりで破壊的な訳だ。


(3)アニメ「Heavy Metal」(1981)

このアニメの話が出てきたのでどうにも観たくなり、中古品を購入。内容は…う~む…どうでしょう。

日本のアニメを見慣れている者には辛い。絵がヘタ、H、2度見ると多少笑いどころがわかる…かな。連続した(らしい)いくつかの話で成り立っている。最終話の女の子は美しくきりっとしていてよい。しかしDVDのジャケットの絵とは全然異なるので、これから観る人は要注意だ。

アニメ「Heavy Metal」

サントラ

「Veteran of the Psychic Wars」

実際には違う場面で流れます。

3.Patti Smithについて

彼女について一言触れておかねばならない。

彼女はパンクの女王として一世を風靡した痩せた女。私の敵。

BÖCの曲にはSmithが結構参加している。コーラスで参加までしている。

彼女は昔、Allen Lanierの恋人だった。そのあとはTom Verlaineの恋人となり、そしてFred Smithと結婚してしまったという。もちろんTodd Rundgrenとも付き合っていたという。

Fred Smith以外は皆私の好みをそうざらえという感じなのだ。

Allen Lanierは金髪で長身、BÖCの中では見栄えよく、だからひっついていたのだろうが、BÖCが彼女とレコーディングしている様は、本当に腹立たしい。

「霊的な詩」などと評されるが、ほんまかいなと思う訳である。

それに、彼女の曲はTelevisionそっくりである。Tom様はそれを許していたのか?

4.最後に「The Iron sun - Cross the Universe Through Black Holes」 Adrian Berry(1977)

作者は王立天文学会フェロー、米国宇宙研究所メンバー。(当時)


内容は、

『ブラックホールを通して宇宙を横断することが可能になる。

将来、他の星へ旅をし、植民地化することが実現する。

現在の人類の成長(多分経済的な)は、いずれ停滞と破滅をもたらす。それを逃れるためには銀河共同体の確立が必要で、子孫が無数の星の周りの軌道上の、何百万もの世界に散らばる社会でなければならない。そうすれば絶滅の脅威は無くなり、人類の文化の開花に制限はなくなる。

なぜ人は星に旅行したいと思うのか。

16世紀・17世紀の大侵略や大移動はなぜ起こったか?イデオロギーや情熱、貿易や富への欲望もあるが、あたらしい技術:海洋航行船が発明されたからだ。

人類は閉じ込められていられることにがまんできない、人は永遠にゆりかごの中で住んでいられないからだ。


ブラックホールを利用すれば瞬時の輸送空間ができ、宇宙船がふっと消え、別の場所でほぼ同じ瞬間にふたたび現れるということが可能になる。

多分21世紀の夜明けには月にコロニーが出来ているだろう。現在でも4つの太陽系を植民地化する計画あることを知っている。成長し続けるためには宇宙の資源が必要である。』


…そのあとは相対性理論の世界に入っていくので理解不能、早めに退出した。

唯一読めた言葉:「ブラックホールには髪の毛がない」


残念ながら、彼の予測のひとつは当たらなかった。現在、月にコロニーはできていない(月の裏側にはあるかもしれない)。しかし、負の予想は当たっている。だれもが、地球がもうパンパンであることを知っている。すべての自然に人間の手が入り、だれかが私有する。多くの場所で土地や資源の取り合いが起こり、民族と民族が奪い合っている。民族内でさえむしりあっている。

彼はあくまで金銭的成長が停滞することを考えてはいたが、現在の、資本主義が行き詰まった未来は考えていなかっただろう。他星の植民地化なんて、イギリス人の考えそうなことだ。


例のSNSだが、ある日だれかが原爆を冗談にした写真を投稿した。「イイネ」がたくさんついた。私は抗議したが、黙殺された。嫌になってそのSNSからは抜けた。




破壊的なs.o.l.の演奏。

「太陽と鉄」についてはまた今度。


(2021/5/30)