ネトウヨの心

くんくん、ここはにおうぞ

ネトウヨのイメージは、こんな感じである。

「日本人はいつも被害者だと思っていて、外国を蔑視し、インターネット上で日本国の素晴らしさをいろいろな形で誇示する、金持ちではない20~30代の人たち。」なんか変だなあ。とりあえずWikipediaを見てみたら、どうも私のイメージは間違っているようである。若い人、ごめんなさい。

Wikipediaをざっと読むと、比較的最近顕著になった風潮なので、決定的な「ネット右翼の定義」は固まっていないようである。多くの人が意見を述べているようだが、いくつかその要素を引用する。

・インターネットのTwitter・電子掲示板上などで、右翼的、国粋主義的、国家主義的、復古主義的な主張をする人たち。

・安倍政権を支持する人たち。

・貧困問題や失業を「怠惰」「自己責任」として唾棄する傾向にある。

・経営者・自営業者や正規雇用で地位が高い傾向にある。

・政治的有効性感覚、権威主義的態度、伝統的家族観の3つの意識が高い。

・政治・社会問題の情報源としてインターネットや本・雑誌、所属団体からの情報を利用する人ほどネット右翼になりやすく、テレビを利用する人ほどなりにくい傾向がある。

・職歴が誇れない、学歴が誇れない、家系が誇れない。日本人であることしか誇れない人たち。(これらを誇れる人は一握りだから違うと思うが。)

・年齢は絞れない。

なお、ネトウヨの行為は櫻井よしこ氏にまで批判されているそうだ。

なんともあいまいな集合体である。ネット右翼を構成する人たちの、年齢や職業や性別や収入など、ネット上の匿名性ゆえにイメージが掴めないようだ。

実は親戚に一人ネトウヨがいるが(噂)、50代・無職、賢く、優しい人である。なので、別に「俺はネトウヨだ!」と威張っているわけではなく、PCの中でこっそりネトウヨをやっている感じである。オフ会などは無いようだ。

そうなのだ、「私はネトウヨだ!」と名乗る人に出会ったことがない。その人が書いている内容から、インターネットの向こうにいるその人の心はネトウヨなのだな、と判断するだけである。

もしかしたら、ネトウヨだと自覚している人はいないのではないか。気持ちがいいぞ、と思ってインターネットを見続けていたら、内部浸食されていく可能性があるからだ。

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日本人とユダヤ人 - イザヤ・ベンダサン 山本七平訳

第2回(1971年) 大宅壮一ノンフィクション賞受賞


この本はトンデモ本である。

あまりに古い本なので、念のために内容を要約しておく(うろ覚えですが)。

著者はイザヤ・ベンダサンという神戸生まれのユダヤ人。日本育ちであり、ユダヤ社会にも属しているので、日本人とユダヤ人の類似点も差異もよく理解している。

ユダヤ人の生活はとても厳しい。迫害されるので、いつも危険に気を使っている。それに比べて日本人のだらしないこと。警察のおかげで国内は安全なのである。

砂漠には水が少ないので、ユダヤ人は水を大切にし、コストがかかることを知っている。それなのに、日本人は水のありがたさが分かっていない。のんきだ。外国が攻めてきてもぼんやりしてるのではないか。

ユダヤでは神と人との契約は絶対のもの。日本は多神教で、天皇が絶妙の位置にある。

ユダヤ人は政治低能、政治のうまい日本人がうらやましい。

あと、よくわからない聖書の解説や、意味のわからない古風な文体の文章、ユダヤと日本の似ている習慣、似ていない習慣など。

発売当時大流行したらしい。開高健も大絶賛したそうだ。

昔は、ユダヤ人ってどんな人?といった感じでしたね。

中学生のときに、道端でインチキなおもちゃを売っている西洋人について、友人は「あれはユダヤ人やで」と、特に蔑まずに教えてくれた。多分ウソだが、世界中で商売をするというイメージはあった。その程度である。今は、色んな国にその国の人としてユダヤ人がいることを知っているし、イスラエルにユダヤ人がいることも、ユリゲラーがイスラエルに住んでいることも知っている。ネタニヤフ首相が何をしているかも、知ろうと思えばある程度はわかる(はず)。

高校生のときに、この本が家に置いてあった。ぺらっとした、ただの文庫本である。読書欲が強い年ごろなのか、つい読んでしまった。訳の分かるところだけ、つまみ読みした。そして、

わぁ、日本人ってすごい!ユダヤ人に尊敬されている!それに、お互い小さな国なのに、頑張ってお金持ちになっている!私たちってすごいんだ…

と思ったのだ。面白い。気分が高揚した。書籍ウヨ発生

でも、何かがひっかかった。ジグゾーパズルの余りの一個をむりやり嵌めている感じだ。どうもベンダサンは私に、「だからね、戦争前の政治や主義・思想はすばらしいのですよ」と言っているように思えたのだ。

その後、イザヤ・ベンダサン=山本七平ということはほぼ公になり、浅見忠雄氏が『にせユダヤ人と日本人』(1983)を出版した。浅見氏は旧約聖書学・古代イスラエル宗教史を専攻した学者で、日本脱カルト協会顧問であった。その本は、ずっと気になっていた気持ち悪さを解決してくれた。ベンダサンが書くユダヤの教義について、その誤りをことごとく論証し、ベンダサンがユダヤ人でないことを証明した。そして、ウソの地盤の上に、山本がその保守的思想を周到に隠して書いていることを明らかにした。

そう、高校生の私はあの瞬間、山本七平に騙されたのである。

私は山本七平にウソを教えられ、それについて考え、山本の都合のよい結論に導かれたのである。浅見氏の反駁本を読まなかったら、人生は気持ち悪いまま、気持ち悪いほうに向かっていたかもしれない。

『にせユダヤ人と日本人』以来、私は「日本人だから、~だ」と言うことを避けるようになった。避けすぎだと思う。でも、高校生くらいで読んだことは、ウソも含めて心に焼き付いていると思うので、ウソを言うのが心配なのだ。私の心を傷つけた山本がうらめしい。いらぬ足かせをつけることになってしまったではないか。

だいたい、ユダヤ人のふりをして書くなど、卑怯である。出版社もだ。日本人が外国人の評価を気にすること(これは怪しい言い方だ!)を重々承知してのことであろう。しかし、誰しも騙されたら怒る。あの時の大人は怒ったのか?未来の人のために、ちゃんと決着をつけなかったのか?今でもAmazonの書評には「素晴らしい」「鋭い論客」「名著」などの意見が散見され、「ああん、ちゃんと反駁本も読んでよ~」とイライラする。

山本七平は、太平洋戦争でフィリピンに送られたそうだ。きっとひどい目にあったことだろう。それなのに、何故保守でいたのか。信条とはそういうものなのかな。

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つまり、書籍ウヨもネトウヨも、同じ仕組みでつくられるのではないかと思うのである。

テレビ番組やYouTubeで外国人に「日本ってすご~い!」と言わせて、観ているものに「ウフフフ」と思わせ、根拠のない自尊心を持たせたらOK。日本がすごいのは、保守政党のおかげ。外国を蔑視させ、何かあればけんか腰でよいことになるのだ。

よって、ネトウヨには「あなたの心は、誰かの意図でかき回されていますよ、いいんですか?」と聞いてあげるのはどうか。あれ?そうか、カルトなのか!

(2019/07/17)

このCMも嫌いになった。「お箸の国の人」だからなんだというのだ。ベトナムでも箸で食っとるわ。

たいそうな前振りなのに、最後は簡易調味料で終わるところは好きである。