オリクスと

クレイク

「オリクスとクレイク」という本は、図書館で見かけた。私はボッス(最近はボスともいう)の絵が好きなので、たまらず手に取った。内容は?見事につかまえられてしまった。

近未来の北アメリカのどこかの国では、遺伝子操作技術が進み、遺伝子操作された生物(食用・ペット用・実験台)が大量生産され、貧しい人はそうしたものしか食べられない。また世界中で土地の囲い込みが進み、大企業が元から住んでいる人の権利を奪っている。

という背景の、よくあるディストピア小説である。

大企業に勤める親とその家族たちは、企業の広大なドーム内で暮らしている。そこにジミーとクレイクという少年がいた。ジミーは凡庸だがクレイクはとんでもなく優秀な少年である。でも彼らは親友になった。高校を卒業すると、彼らは当然別の道を歩むことになり、ジミーは文学(その頃はもう意味をなさない)の道へ、クレイクは遺伝子研究に突き進むのであった。

そして、パンデミック感染症が起こり、激しい気候変動が起こり…いろいろお決まりのことが起こる。

最初に読んだときはただただあらすじを追い、人類が破滅するさまを楽しんだ。だがピンとこない部分があった。破滅するだけで何故こんなに面白いんだろう?

再度読み直してみた。発見したこと。

これは男の熱い友情の物語である。胸にせまるものがあるのだ。

もしこれから読む方がいるとまずいので、これ以上書きません。一度読んでみてください。

タイトルの「オリクス」という女性も登場する。

題名が「ジミーとクレイク」ではなく「オリクスとクレイク」なところにツボがあると考えている。オリクスとクレイクが新しい世界を作ったのです。までしか言えないな~。

写真は左側が日本で出版された単行本で右側がイギリスで発行されたペーパーバックである。なんという違いでしょう。日本の本の豪華さよ。

私は美しいボッスの「快楽の園」が飾られた日本の本が大好きである。一方のイギリス版であるが、これだと手に取らないかなあと思う。確かに豚ちゃんの遺伝子の件も出てくるが。

日本の本って、お金かけてるな。でも、私はそういうのが好きなんだな。

(2021/7/4)