筒井康隆の短編

激しい雨に、たまらずベランダに逃げ込んできた若い烏。水のはじき方が違う。

私の兄は少し筒井康隆に似ている。まぶたがはれぼったいところなど。(一方、がきデカの福島君にも似ている。)

それはともかく、

筒井康隆といえば、中高生の頃皆こぞって読み漁り、「蟹甲癬」、「陰悩録」や「腸はどこへいった」などについて友人と語り合ったものである。

あんなに人気があったのに、今となっては本屋さんに4~5冊置いてある程度である。どんどん新しい作家が出てくるから、置き場がないのであろう。

ところで、

もう一度読んでみたい短編小説がある。気になることがあって。ところがその題名がわからない。ネットで調べているのだが、どうしても出てこない。

その小説のキーワードは『キトン・キトン』である。この話をしても誰も知らないのだ。私の記憶違いか。私の中では、『キトン・キトン』は地団駄を踏むような動作をしながら叫ぶ言葉で、実は今でも地団駄を踏むときは、心の中で「キトン・キトン!」と叫んでいるのである。

うろ覚えなあらすじ。------

未来の社会では、老人は邪魔者である。世界は若者がのしており、老人は影をひそめて孤独に暮らしている。若者は働く必要はなく、毎夜ディスコでパーティを行い、酒と薬物におぼれている。そして、老人を憎んでいる。若者の間の流行はめまぐるしく変わり、毎日のように新しい言葉が生まれていく。

アパートの一室に老人が住んでいる。毎日電話のベルが鳴る(無線だったかも)。老女の声で、「今日の流行語は〇〇〇」と連絡が入る。老人は、夜になると若者風の服を身に着け、若者に見える化粧をし、かつらをかぶって街にでかけるのだ。そして若者として、若者達に混じって騒いで一夜を過ごすのである(何のためかは不明。多分何かのレジスタンスだったのか)。

ある日の流行語は『キトン・キトン』…!

彼はいつもと同じように街に出かけるが、ふとしたことで老人であることがばれてしまう。(この辺の記述は手に汗握るものがある)

彼は残酷な若者たちにののしられ、かつらをはがされ、「キトン・キトン!」と言いわれながら踏みつけられ続けるのであった。

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古い言葉満載だなあ。

これが予言だとすれば、今のところ当たっていない。老人は弱くはない。若者は少なくて、子供はもっと少ない。テレビCMを見ていると、老人の文化は確立されているなあと思う。まだ入れない。一方、私は最近若い人と話をしていないので、若い人が何を楽しんでいるのかさっぱりわからない。どちらのこともわからない。

なにしろ40年前に読んだもの、自分の記憶が正しいのか誤っているのか確認したい。そして、気持ちよく「キトン・キトン!」と言い続けたいのである。

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ここまで書いて、ふと思いついた。あっ!もしかしたら筒井康隆じゃないかもしれない!

考え直して「小松左京」で検索したら出てきたよ~(‘Д’)

せまりくる足音

ですって。

どうもすみません、ここまで読ませちゃって。古本屋でさがします。キトンの件は解決していないので。

(もちろん「あーむ堂」では扱いません。)


(2019/6/18)