しのびよる足音 - 小松左京

[イメージ]ニゲロォォォ…… マテェ、じさま~

今日はコグマチャンで攻めようと思いましたが、書いてみたらかわいそうになったので、写真だけにします。

----------

以前書いた「筒井康隆の短編」の最後で、私が探していた本は、筒井康隆ではなく、小松左京の「しのびよる足音」だということが分かった。早速ネットの古本屋にて、1円で買った。1円の本を迅速に送ってくれるなんて、なんとありがたい商売だろう。届いたのは、まっ茶茶の文庫本、字がとても小さいので老眼の始まった目にはきついが、短編なので早速読んでみた。

内容については、記憶がほぼ正しかった。若い時のアタマはすばらしいと思う。ただ、「キトン!キトン!」という言葉は、この小説の中の重要なキーワードであった。当時、そのひっかけを理解していなかったのかもしれない。


あらすじ----------

華やかな大都会の片隅の、狭いアパートに住む老人は、かくし場所から受話器を取り出しダイヤルを回した。「オールド・ラング・サイン」放送からかすれた女の声「新語-二十代、”エック”、”ヨック”、十代”コテコテ”、廃語-”バタンケ”。服装-男子の、髪の毛のリボンは地区により流行遅れ。顎髭のちょうど真ん中をそり落とすのが新しいファッション。踊り-”キトン”というニューステップ。中心は地下酒場ディディ。」

老人は、この情報を頭に叩き込み、出かける支度をする。プラスチックペーストで顔の皺を埋める。髪を真っ黒に染め、かつらで禿を隠す。三つ編みにリボンをつける。髭の真ん中をそり落とし、白い毛を染める。瞳孔拡散剤入りの目薬。青白いファンデーション。槍のように尖らせた歯。老人斑をドーランで塗りつぶす。片足首には、たくさんの小さな鈴が付いた足輪を。etc.。終わったころには、異様でグロテスクで、だがあでやかな痩身の青年となっている。

彼は街に出た。行き交う若者たちが「ヤック!」というと「エック!」と答える。若者たちは彼に負けないグロテスクな恰好だ。街頭では乱交パーティ、集団喧嘩。疲れた彼は地下酒場に降りていく。

訳の分からない新語での会話が続く。

彼は、知り合った娘の裸体にボディペインティングで大きな女陰を描き、拍手喝采を受ける。”詩人”が「ワイワイコンマ、ワイコンマ」と言う。即興詩である。「ワイワイコンマ、チューライカ…」併せて拙劣な演奏が始まる。娘は、「”キトン”に合うよ!」と叫ぶと、キュッと床を片足でならし、もう一方の足で床をトン、と踏んだ。ところが、”キトン”は全裸で踏むステップだったのだ。衣服をはぎ取られ、老人であることがばれてしまった。憎悪に満ちた若者たちに囲まれ、地上に逃げる。足首の鈴がシャランと鳴り、若者たちが爆笑する。

地上では、あらたな青年一派に襲われる。背中を蹴られ、腕を踏まれる。「あば!…あば!…じさま!…じさま…」

もう終わりだ、と思ったその時、「十代ガキ」の一派が現れ、二十代と争いだした。闘う若々しい足の下で、彼は気を失った。

気が付くと、おぼろげに子どもたちが見えた。助けてくれ。「これ-な…?」「しい…」何を言っているのか。

そもそも、この世代間闘争を始めたのは彼の世代だった。彼らは、自分たちだけの世界を作るために、年上の世代に不寛容な闘いをいどみ、老人を社会の片隅に押し込め、伝統を破壊した。しかし、自分たちが君臨したころには、すでに下の世代からの攻撃が始まっていた。世代間のディスコミュニケーションは進む一方である。

彼はほこりにまみれ、横たわり、「キュッ! トン!…」というかすかな音を聞いていた。それは、彼自身の心臓の音だった。

----------

やっぱり死語満載。

たとえば熊や何かの動物にしてみると、その社会の縄張り争いで、若いものが勝っていく、というのは自然のことに思える。人間は老人を踏みつけない?何故だろう?少なくとも今の日本人は、老人に辛い思いをさせないという理想は持っている。年金問題や介護問題もあるが、理想を捨てないように工夫していきたいものである。

また、文化や習慣がどんどん変わっても仕方がない。私も親世代の慣習を、少なからず受け継がなかった。しかし、しつこいが、争いたいという欲求だけは引き継がれなければよいのにな、と心配する。件の若い政治家の言葉がとても苦々しい。

(2019/07/01)

[写真2]だららんず(私設バンド)

【リラックマ基礎知識】

みなさん、知っていますか?チャイロイコグマチャンは森に一人で住んでいる野生の熊です。ある日森でコリラックマに出会い、友だちになりました。コリラックマはリラックマとキイロイトリにコグマチャンを紹介し、みんなで仲良く遊びました。年に一回の「はちみつの森収穫祭」では、コグマチャンが集めたはちみつをみんなでいただき、happyになるのです。


[写真2]だららんず(私設バンド):(左から)コリラックマ(Key)、リラックマ(Vo)、キイロイトリ(Drs )、チャイロイコグマチャン(G)
だららんずのPVがあるので、見てください。