Jonathan Hultén
私は美しい魔物に遭遇した。私は、何十年もの間、部屋に転がっている古い魔物たちと過ごしてきた。最近は毎年のように彼らは逝ってしまい、自分の頭もぼんやりしてきて命日もうろ覚えだ。もう新しい魔物には出会えないのだろうな、私は何百回と聞いた魔物の曲の中で暮らしていくのだろう、と思っていた。ところが、新しい魔物を見つけてしまったのだ。突然、YouTubeの中で。
その魔物は「Jonathan Hultén」(ヨナサン・フルティーン?)という。YouTubeの『斎藤知事の会見』を見飽きたころ、YouTubeの「おすすめ」に、“AFTERLIFE - Jonathan Hultén” という見知らぬ曲が表示された。全く知らない人だ。
アルバムの絵に惹かれて聞いてみた。『死後の世界に旅立つ前に、心を錆びさせないでください、直感を見つけてください、忘れた知恵や誠実さを見つけてください』といった、ごく自然な癒しの言葉が、押しつけがましくなく歌われていた。
ふむ、これはよいかもしれない。他の作品も観てみたくなった。そして、"Riverflame" というビデオに私の目は釘付けになってしまった。「デスメタ」「ゴスメタ」を乗り越え、遠い過去の「プログレ」に回帰したような、新しさと懐かしさが融合している。久しぶりの感動である。
プロモーションビデオでは、怪しい人物が、森の中の清浄な河原にいる。黒いスカーフをかぶり、黒い手袋をはめ、黒いワンピースの上に日本の着物を羽織り、田中泯のように踊っている。顔は真っ白に塗られ、その上に不思議な化粧をほどこしている。
画面が切り替わると、北欧の美形で華奢な青年が、暗闇の中で歌っている。時に囁くように、時に力強く。踊っていたのは彼だ。その内容は、やはり「生きている間は踊り続けろ」といったものであった。まるで私のための歌ではないか。
ここに歌詞を掲載することはできないが、"Riverflame"では次のようなことを歌っている。
憂鬱に心を蝕まれないように
悲しみに引き止められないように
迷路を抜けて
道を見つけられますように
迷路を抜けられる日は来るのだろうか?
虜になってしまった私は、焦って友人たちにチャットしてむりやり共感してもらい、SNSにUPし友人の賛同を得、DISKUNIONに詳しい刈さんに「DVDを手に入れろ」と指令を出した。
それにしても、いつの間に世の中はこんなことになっていたのだ?私がフルティーンさんを見つけたのではなく、YouTubeが、私の普段の視聴の好みに合わせて、フルティーンさんを引っ張り出したのだ。つくづくAIは恐ろしいと思った。
彼は現在、アメリカツアーの最中らしい。日本に来てくれないものか。もし情報を見かけたら教えていただきたい。
当面、私はフルティーンさんを聞き続けるだろう。
AIに振り回されて、散財していくのだろう…。
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↓ここから視聴できます。
https://youtu.be/svnAFZVleVs?si=328Y0JVQr_JjqPKt