2. 台南から大目降へ
台南から大耳降まで歩いてきた久我中尉は、その足で警察署に向かった。
内地人の所長は、久我が何者かということを心得ており、邪魔はしないので好きにやってくれ、といった感じだ。
久我は苦笑しながらも、本島人の片目の警官・憑から事件の仔細を聞くのだった。
鄭が毒殺されたのは大耳降の商店街のパーラーで、一緒にいた黄とサイダーを飲んでいた。
そして離れたところに坂西夫人(応氏珊希)、反対側に品木渡、入口にパーラーの少女がいた。
だれがどうやってサイダーのコップに毒をいれたのか。動機は何か。何もかもはっきりしない。
黄は確実な証拠がないまま、留置されていた。
やはり、なんのことはない、ただの事件だ。
久我中尉は、翌日台南に戻ろうと考えていた。
台南から大目降まではバスに乗って行った。歩くなんて考えられない、とんでもない暑さだ。
バスは混んではいるものの快適で、都度停車する町は魅力的だった。
写真は台南から大目降まで乗ったバス。
やっと大耳降(大目降)に着いた!
どんなところだろう?!
バスを降りてしばらくさまようと、道一杯に商店が並んでいるのが目に入った。
大耳降だ…
この「なんちゃって」西洋風建物は、戦前・戦中のものと思われる(正式名称は知らない)。今では自動車で混雑し、路駐だらけで風情がないが、青空の下に連なる家屋は懐かしさを伴い、美しい。戦中はさぞ華やかな通りだっただろう。よく残していたものだ。
さて、パーラーは何処に…?
小説のパーラーが今ある訳がないが、この通りの中に「新化珈琲店」という喫茶店があり、そこには素敵なマスターがいて、普通にコーヒーが飲めるのだ。言葉は通じないが、扇風機をつけてくれたり色々気をつかっていただいた。私の中ではここを事件があったパーラーと認定。
それから警察署。町はずれにあった。これも久我中尉が行った警察署と認定。
品木青年の勤めていた学校。これも勝手に認定。町はずれにありました。
町はすぐ終わり、果てしなく暑い道が続くのでした。
そんなわけで、旅は続きます。読んでくれてありがとうございます。